夏休みも終わり、二学期が始まった9月1日。雨の中、鎌倉駅から江ノ電に乗ること3駅、鎌倉大仏や長谷寺といった観光名所を有する鎌倉の観光スポット長谷へ。目的地は創業約300年の和菓子店「力餅家」。なんでもその日のうちに食べなければいけないという名物「権五郎力餅」があるそうで、はたしてそのお味は?
最近の暑さがまるで嘘だったのように気温が下がり、しんしんと雨が降る。そんな9月の鎌倉は、やはり人もまばらで、祭りの後のようなセンチメンタルさ。江ノ電に乗って、窓についた雨粒を見ていると、あっというまに目的地の長谷駅に到着です。
人影のない夏の終わりの雨の海岸を歩き、人気ドラマのロケ地としても知られるお寺を巡っていると、さながらセンチメンタルな一人旅かのような気分に…。しかし、ちょうどいいところで今回の目的地、創業約300年の和菓子店「力餅家」にたどり着きました。店主が「いらっしゃいませ」と明るく迎えてくれました。
江戸時代の元禄年間(1688~1703年)に創業し、300年以上の歴史を持つという力餅家。その看板商品である「権五郎力餅」は、あんこでもちをくるんだものと、求肥をくるんだものの2種類があります。なんでも近所の御霊神社に祀られている武将、鎌倉権五郎影政が境内にある「袂石(たもといし)」と「手玉石(てだまいし)」という大きな石を持ち上げるほどの力持ちだったとのことで、「力持ち」から「力餅」とその名の由来になったそうです。
あまりに歴史が古いため、店主もこの権五郎力餅の誕生の経緯は分からないそう。ただし「先代からの味を守るだけです」と話す通り、その作り方と味はしっかりと一子相伝で受け継がれ、昔と何も変えることなく、この2014年の鎌倉で変わらぬ大人気を博しているのです。やさしい甘さのあんこと、風味豊かなおもちの相性は抜群。素朴さと洗練が同居する、なかなか味わえないおいしさです。
この日も雨のなかお客さんが次々に訪れ、「求肥のほうを」「おもちのほうを」と買い求めていました。なんでもこの権五郎力餅は、添加物を一切使用していないため、おもちは当日限り、求肥でも3日しか日持ちしないとのこと。ぜひ一度お店に行かれることをおすすめします。
文・照沼健太