赤い電車に乗って、夏の終わりの平和島駅へ。今回は、享保元年創業の「餅甚(もちじん)」に向かいます。懐かしい街並みの商店街は、旧東海道の宿場町だったそう。自転車で走る野球少年、捕まえたセミを見せてくれる男の子…漂う「夏休み感」がたまりません。

老舗だから敷居が高いかな、と思いながら暖簾をくぐると、びっくりするほどアットホームな笑顔に迎えられました。家族とお手伝いさんの5人で切り盛りする「餅甚」。名物のあべ川餅は静岡県出身の創業者が伝えたもので、徳川家康が安倍川上流の金山で食べた餅がルーツです。

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工房では、つきたての餅を丸める作業が始まりました。とろけそうな餅を素早くちぎっていく、10代目の福本義一さん。それを11代目の義孝さんと、女将の京子さんがどんどん丸めて…。みるみる満月のようなお餅のパレードができていくではないですか!

昔から、赤子と餅は手荒く扱えって言ってね。柔らかいから、のんびりしてると手についちゃうの」と、女将さん。義孝さんいわく「井戸水をちょっとずつ混ぜて徹底的につくから、こんなに柔らかい餅になる」のだそう。また、「按配が難しく大量には作れない」ので、よそから引き合いがきても断っているとか。つまり、ここでしか味わえないということ。「手間がかかるものはおいしい。手ェ抜いちゃいけないね~」という大将の言葉に、二人が頷きます。

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だってもう、初体験のふわふわさなんです。そこに香ばしいきなこと、とろ~り黒蜜の一体感!普通のあべ川餅はきなこと砂糖をかけますが、「餅甚」の特徴は、この黒蜜。300年にわたり親から子へと受け継がれてきた秘伝の味で、現在は義孝さんが守っています。

ちなみに義孝さんは、新婚ホヤホヤ。2ヶ月前から働き始めたという奥様の早苗さんの笑顔で、店は華やいでいました。

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文・田邉愛理|動画撮影・山崎智世|動画編集・照沼健太

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