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もともとは東北地方の郷土料理で、近年全国でも一般化した枝豆の餡を使った「ずんだもち」。なんでも豆を打って潰すという意味の「豆打(づだ)」が訛ったのが語源だといい、昔は「づんだ」ではなく「づんだ」という表記が一般的だったそうです。先祖代々、伊達家御用達の菓子司をしてきたという歴史があり、明治10年(1877年)におもち屋さんとして創業した、仙台の老舗村上屋餅店は、「づんだ餅の発祥の店」と言われる老舗です。

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仙台駅からしばらく歩いたところにあるのが、こじんまりとした可愛らしくも風格あるおもち屋さん。ここが、仙台で最も歴史ある村上屋餅店です。お店にはお持ち帰り用のショーウインドウのほか、イートインスペースもあり、常に客足が途切れることがありません。人気グルメレビューサイトでも高評価を獲得しており、仙台の人気スポットにもなっているようです。

「づんだ餅」を注文すると、お盆の上に熱いお茶やお漬物と一緒に色鮮やかな緑色のづんだがかけられたおもちが出てきました。さっそくいただくと、さらさらとふんわりした口触り。枝豆の香りが抜け、クリーミーな優しい甘さが広がります。仙台出身の筆者ですが、真っ先に「こんな美味しいづんだもちは食べたことない!」と思わされました。

そもそも、づんだの作り方は「枝豆を茹で、薄皮を剥き、潰して砂糖を入れながら混ぜる」というシンプルなもの。それをおもちにかけるだけです。では、他とはなにが違うのでしょうか?

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四代目の村上さんにお話を伺うと「こだわりもなにも、とにかく美味しければいい。真っ当な作り方をしているんだ」とのお返事が。どう真っ当なのかというと、非常に面倒な「薄皮取り」を丁寧に行うのだそう。この薄皮取りを疎かにすると、薄皮が黒く変色し、づんだのきれいな緑色が出ないといいます。そこで他店では黒くならないように砂糖を沢山入れたりするのだそうですが「それでは味がくどくなってしまう」と村上さんはこだわり、丁寧に薄皮をむくことにしているといいます。

しかし驚くことに薄皮をすべて剥いていくと、どうしても豆自体も削ってしまうため、最終的には量が半減してしまうのだとか。それでは材料費が高くついてしまいますが、そこにはづんだもち発祥のお店としての意地があります。「材料費と手間賃とお店を続けていく利益、それらを考慮しての金額と、お客様がその商品にいくら出す価値があるかという判断のバランスが商売」と村上さんは強い眼差しで教えてくれました。

そんな伝統の「づんだもち」ですが、時代に合わせて少しずつアレンジを行っているといいます。「昔は機械が無かったからすり鉢で擦っていて、もっと豆が荒い感じで残っていたんだけど、それでは歯に豆が挟まったりしてしまう。だから今は前よりも細かくしているんだ。かといってザラザラ感がないと枝豆らしくないから、ほどよく枝豆らしさを感じられるようにバランスを考えて残している」とのこと。

さらに「うちは、あくまでもち屋」と続けます。「づんだは、もちを食べさせるための“ルー”みたいなものなんだから、そもそももちが美味しくないといけない。変なものを混ぜたりせず、毎日その日の分を朝についているんだ」。

それから、宮城県産のもち米や、アルカリイオン水など、村上さんは素材へのこだわりについても教えてくれましたが、それでも最終的にはこうお話されていました。「でも、どこのものを使っているから偉いとかじゃなく、とにかく美味いもちをつくる。それが一番なんだ」。

「」昔ながらの職人気質を守り続ける老舗・村上屋餅店。今日も地元の人から観光客まで、老若男女のお客さんが、ひっきりなしに訪れているはずです。

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文・照沼健太

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